学生の頃は毎日板書をしていたことと思いますので、手書きをする機会は身近に感じられ
ていたのではないでしょうか。しかし社会人になると、大抵の仕事はパソコンで処理する
ようになります。
ましてやインターネットや携帯電話が普及した今の時代、手書きで何かを書くという機会
はずいぶんと減りました。
ですが、逆に手書きでないといけない場面もまだまだあります。履歴書、芳名帳、ご祝儀
などの宛名etc…
私たちは普段手書きに慣れていない分、いざという時のその1回1回が妙に重苦しく感じ
てしまいがちです。
そして「達筆まではいかなくても、せめてもう少しうまくなりたい…」と思うのです。
では、いざ字がうまくなりたいと思い、行動に移そうとしたときまず何をしますか?
大抵の人は本屋に駆け込み、字がうまくなるための本を選び、子供のころの漢字ノートの
ような要領でお手本に沿って何度も漢字やひらがなを練習することと思います。
行動力のある人はペン字教室や書道教室に駆け込むかもしれません。
ですが、字がうまくなる本に載っている素晴らしいお手本や、書道家の先生が書く美しい
字は、先生だから書ける字です。あそこに至るまでに何年、何十年もの時間を費やして
努力をしてきています。それを少し真似したぐらいで上手くなるわけがないのです。それ
に、お手本通りひたすら練習したところで、ほとんど身に付きません。お手本の
真似をしているだけなので、お手本がなくなった時全く書けないからです。ましてや字が
うまくなりたいと思っている人のほとんどが、「教室に通うほどではないし、
お手本を見ながら毎日練習するのもだるい。」と思っているのではないでしょうか。
そもそも「うまい字」とは何なのか?
書道家のようなスラスラと書くつながった美しい字のことか、それともネットで検索すれ
ば出てくるような左右対称のきっちりと羅列したした活字なのか。
私は「相手が読みやすく、想いが伝わる字」だと考えます。そもそも文字を書くというこ
とは、それを読む相手がいるということです。
ですので、なんて書いてあるのか相手に伝わらないようではそれはうまい字とは言えませ
ん。そして、手書きとは「書き手の気持ち」がしっかりと繁栄される伝達手段です。
「字は心の顔」と言われますが、気持を込めて丁寧に書いた字はたとえ少しいびつでも相
手には伝わるものです。
ですので、うまい字を書きたいのなら、大原則として「相手に読みやすく、自分の想いを
伝える」ことを意識してほしいのです。
しかし、気持ちだけで全てがどうにかなるわけではないので「これだけは必要」という必
ずおさえてほしいポイントを5つに分けてお話しようと思います。
この5つのポイントをおさえれば、あなたはきっと「うまい字」が書けるようになるでし
ょう。
1.正しい姿勢で丁寧に時間をかけてゆっくり書く
「なんだそんな簡単な事か」と思うかもしれません。しかし、その簡単な事が意外とでき
ないのです。
正しい姿勢とは、椅子に腰かける場合でも正座の場合でも共通して「背筋を伸ばし頭をや
やうつむきかげんにして紙面に対峙する」ことです。力が入りすぎていると線に伸びやか
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字がうまくなる
さが
なくなりますので、肩の力を抜いて、自然に正しい姿勢をとれるように普段から心がけま
しょう。
また、書道家ですらひとつの文章、作品を仕上げる時、ゆっくりと時間をかけます。それ
を字うまくない人がサラサラと書いてうまく書けるわけがありません。
前述した通り、文字を書くということは、それを受け取る「読み手」がいます。読み手の
ことを考えて、まずは丁寧にゆっくりと筆を運ぶことから始めましょう。
2.全体のバランスを考える
人の第一印象は5秒で決まるといいますが、字でも全く同じことが言えます。パッと見で
あなたの文字が綺麗か、汚いか判断されます。
大切なのは完全に1文字1文字綺麗に書くことではなく、綺麗に「見える」ことが大切な
のです。よく見ると1文字1文字はいびつだけど、全体で見るとなんとなくまとまってて
綺麗に見える、これを目指します。
では、具体的にどうしたらよいのか。以下の2つに分けていきましょう。
①常に文字の中心を意識する【図】
新聞や雑誌、本などのビシッと羅列された文字は美しいものです。文字には必ず「中
心」があります。それを普段から常に意識しましょう。「申」「常」「重」など明らかに
真ん中に
バシっと線が入っているものは分かりやすいですが、わかりにくいものは文字全体を
見て、このあたりが中心か?と常に考える癖をつけましょう。
これは、縦書きよりも横書きの方が難しいです。罫線で仕切られている用紙に横書き
で記入する場合の手っ取り早く綺麗に見せる方法として、下の罫線に合わせて書くといい
でしょう。
最初は難しいかもしれませんが、大切なことは「意識」することです。それだけで劇
的にかわります。
②文字によって大きさを変える【図】
美しい文面は字の大きさが同じように見えますが、実際に同じ大きさで書いているわ
けではありません。それはあくまでも「同じに見える」ように文字の大きさをかえている
のです。
全て同じにしたらどうなるか。このように画数の少ない文字は、余白が多い分、目の
錯覚でかなり大きくみえてしまうのです。
つまり、画数の多い字は大きく、少ない字は小さく書く必要があります。これに加え
て、文章にはひらがなも交じります。基本的にひらがなは漢字より小さく書けばいいので
すが、
単語と単語を結ぶ「の」「と」「で」などの助詞はさらに小さく、逆に文末にくる一
文字は大きめの方がバランスがとれます。
3.「永」「しんにょう」をマスターせよ【図】
「永字八法」という言葉をご存知でしょうか?これは字の基本をなす点画という意味で、
「永」は実際は5画ですが、これを細かく分解していくと8つの点画になります。
漢字は、この8つの点画を組み合わせてできるので、「永」のポイントさえ覚え、マスタ
ーすることによって複雑で難しい漢字でも、結局はこれらの点画と、それらが少し変形し
た点画
との組み合わせなので、うまく書けるようになる、ということです。
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字がうまくなる
①右下にむけて徐々に圧を加えて止める
②横画は常に少し右上がりに書く
③ゆっくりまっすぐ。最後は止める
④ゆっくりまっすぐ線を引き、はねる前に少し内側に入るとバランスよくなります。
⑤線の半分あたりまではゆっくり、その後は素早くぬく
⑥⑤と同様
⑦右上から左下に一気にぬく
⑧線が折れるところまではゆっくり丁寧に、最後は方向をかえて静かにぬく
つづいてしんにょうです。字に自信のない人が特に書きにくい字としてあげるのがしんに
ょうです。確かにバランスがとりにくい上になかなかの頻度で登場するのが厄介です。
しかしこのしんにょうも綺麗に見せるための法則があります。それが、「三折法」です。
三折法とは図のように、最後の線を1,2,3と折るように書く事です。
そして、3折目を上にある字の右端にそろえます。この2つのポイントさえおさえれば、
バランスよく書けるのです。
4.ひらがなのポイントをつかめ【図】
これまで、全体のバランスや漢字についてお話してきましたが、次はひらがなについてで
す。
日本の常用漢字が2136文字なのに対して、ひらがなはたった48文字からなります。
さらに、日常の文章、はがき、手紙などでひらがなの占める割合は、なんと7割ほどと言
われています。つまり、ひらがなのポイントをつかみ、48文字マスターすることによっ

手っ取り早くきれいな字を書くことができるのです。
ひらがなのポイントを全部つかむと聞くと膨大に感じるかもしれません。ですが、似た字
同士で一括りにしてまとめ、同類ごとにコツをつかんでいけば上達は早いです。
ですが、前述しております通り、お手本をただ真似するだけでは何も上達しません。
大切な事は、お手本を真似して同じように書くのではなく、お手本を見てその「ポイン
ト」を「理解」して「覚える」事です。
では早速グループにわけていきたいと思います。
①「ま」「な」「お」のグループ
このグループの共通することは「三角形の結び」です。
図の要領で1,2,3と筆を進めますが、角で2回しっかりと筆を止めるのが最大の
ポイントです。サササーとなんとなく書いてもうまく結びを作ることはできないので
ここは慎重に書きましょう。
②「よ」「ほ」「は」「ね」「ぬ」のグループ
先ほどと同様に結びがある字なのですが、違うのは「楕円の結び」であることです。
図の要領で1,2と筆を進めます。止めるのは1回だけです。
できあがりの結びの形が横長の楕円形になっているか、確認しましょう。
③「す」「む」「る」のグループ
こちらも結びがある字ですが、この3つは特殊な形をとります。3つに共通して言え
るポイントは、「結びを小さめに」ということです。
大きいと子供っぽい字になってしまうので注意してください。「す」の結びは「よ」
と形が同じなのでそれを参考にしてください。他には、最後の払いを長くなりすぎないよ
うに
注意しましょう。「む」は結びの位置を字の最下部にもってくる事がポイントです。
「る」は結びの位置を字の中心線上にくるように意識しましょう。
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④「の」「あ」「め」のグループ
「の」は書き始めの斜線を丸めすぎないように注意し、折り返しの所でしっかり止
め、最初の斜線のほぼ真ん中あたりまで線を引き上げてから、曲線を描きます。
曲線を描くのはまたもや先ほどと同じ斜線の中心部までで、そこまで書いたら、最後
はスッとはらいます。これと同じ要領で「あ」「め」も練習しましょう。
⑤「い」「ふ」「む」「か」のグループ
このグループの特徴は、最後が点で終わることです。共通のポイントは「最後の点を
遠くにおく」ことです。
といってもむやみに話せばいいというものではありません。大切なのは、「線と線の
繋がりを意識する」ことです。線を描いた後、次の線を書くときに空中で繋げてみましょ
う。
「か」の最後の点は、1筆目の肩の高さにもってくると良いでしょう。
⑥「つ」「わ」「や」「ち」のグループ
このグループは曲線の書き始めより折り返しの部分を上にすることがポイントです。
つまりやや右上がりに書くということですね。
加えて「ち」は最後の曲線部分を小さめに書いたほうがバランスよく見えます。
⑦「う」「え」「ら」のグループ
点が1筆目にくるパターンですが、ポイントは⑤と同じで、線と線の繋がりをしっか
り意識するということです。加えて「ら」は「ち」と同様に最後の曲線部分は小さめが良
いでしょう。

⑧「こ」「た」「に」「さ」「き」のグループ
このグループは、終筆のふくらむ線の位置の取り方がもっとも重要です。ここで全て
が決まります。
「こ」の1筆目、ハネてから2筆目にいくところは、⑤⑦同様、線と線の繋がりを意
識して筆をいれ、下方にふくらみをもたせながら徐々に力を加えていき最後しっかりと止
めます。
他の字も同様です。
⑨「け」「り」
ポイントは右側の線を曲げすぎないことです。ここを丸めすぎてしまうと、子供っぽ
い幼稚な字になってしまいます。
以上、ひらがなを9つのグループに分けてポイントを説明してきました。
分類上当てはまらなかった字も含めてひらがなのワンポイント表をのせておきますので参
考にしてください。
5.数字はさらに時間をかけて丁寧に書こう【図】
最後は、数字についてです。
ひらがなと同様、意外と書く機会が多いのが数字です。自分の住所を書く時は必ずと言っ
ていいほど数字が出てくることと思います。住所を書く際に大切なことはしっかりとその
住所が
相手に伝わるか、ということです。再三申しておりますが、必ず「読み手」がいることを
忘れてはいけません。最後にもう一度原点に戻って、相手が読みやすく、はっきり、正し

丁寧に書くということを心がけましょう。
数字は、ひらがなよりさらに少ない10文字ですので、練習する価値は大いにあります。
斜体は何種類かありますが、オススメなのは、傾斜体です。ポイントは少し斜めに、そし
て丸くなる部分が大きすぎると子供っぽい印象になってしまいますので、やや小さめに書
くと
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字がうまくなる
良いでしょう。これも、横書きの場合は下の罫線に沿わせると美しく見えます。
これですべてのポイント解説が終わりました。
ここまで読んでくださいましてありがとうございました。
字に「生まれつき下手」はありません。ひとりひとり顔や体形、声や性格が違うように、
あなたの字は個性です。
その個性をつぶすのではなく、生かしつつ、必要なポイントを押さえて、あなたらしい素
敵な文字を書いていただきたい、と思いお話してきました。
デジタル社会に圧倒されて手書きが減っている今日ですが、紙とペン、そしてあなたのそ
の手があれば、いつでもどこでも文字を書くことができます。
これから先少しでも「手書きで何か書いてみようかな」「字を書くのそんなに嫌じゃない
な」と思っていただけたら幸いです。

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